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今月の熊G 2025年8月

  • piyo-kamakura
  • 2025年8月18日
  • 読了時間: 4分

「なんであたしたちを叩こうとしたのよっ!」「危なかったよっ!」小さい子どもたちがえらい剣幕で熊Gに詰め寄ってきた。

先日幼児棟のみんなでスイカ割りをした時のこと。子どもたちが順番に目隠しして大きなスイカを叩いていったけど割れない。大人も続き、熊Gの番が来た。手拭いで目隠ししてくるくる回らされたところで、ひとつみんなに笑ってもらおうと思った。あらぬ方向を向き座っている子どもたちの頭上あたりで棒を振りかざすしぐさをするとキャーキャー言って大騒ぎ。方向転換して別の子たちの頭上でまた振りかざしてキャーキャー。そんなお決まりの冗談をやったあとスイカからぜんぜんはずれた床を叩いて熊Gは終了。そのあと小池が木刀でみごと叩き割った。そしてみんなでスイカを食べたあと、2、3歳の小さい子たちが熊Gに文句を言いにきたってわけ。その怒り方があまりに真剣だったのでどうしてかな?と思った。

数日たって、もしかしたらあれはメンタライジングの問題なんじゃないかと思い至った。

メンタライジングとは幼児が脳の発達過程で獲得する能力で、他人の心を推測してその人の行動の背景を理解する力のこと。

「衝立課題(視点理解)」という実験がある。机の上についたてがあり、その手前にリンゴが一つ置いてある。こっち側にいる私はリンゴの存在を知っている。でも向こう側の友だちには見えてないはずだからリンゴのことは知らないだろう。そう考えられるのは4~5歳の子どもで、他人の視点を推測することができる脳になっている。しかし2~3歳の子は私に見えているのだから向こう側の友だちにも見えていると思ってしまう。まだ自分の視点だけしか認識できない。メンタライジングが獲得できていない脳なのだ。

スイカ割りの時、小さい子は熊Gのことが見えているから熊Gも自分を見ていると考えてしまった。手拭いで周りが見えなくなっているとは理解できない。だから本気で自分を狙って叩こうとしていると思って怒っていたのだ。というのが熊Gの仮説である。

入園前の見学に来た保護者に熊Gが必ず説明していることがある。卒園の頃には自分の気持ちをちゃんと伝えられる子になってほしい、と同時に相手のきもちもおもんぱかれるようになってほしい。つまり社会性を学んでほしいが、それは0歳児から保育園で同じ年ごろの子たちとぶつかり合う中で学んでいくのでピヨでは安易にけんかを止めません、と。実はそれはメンタライジングの話だったのだ。

話は飛ぶが、広島県知事が8月6日の原爆式典のあいさつで、抑止力とは絶対的な法則ではなくて政治家の頭の中にあるフィクションに過ぎないと訴えていた。核抑止力理論とは、核保有国同士は報復による自国の壊滅を恐れているから先制攻撃してこないに決まってるという理論だ。そんな勝手な思い込みの前提の上に成り立っているが、でもそれはあくまで推測だからフィクションであるというわけ。

これって、目隠しすると見えなくなることをみんながわかっているという熊Gの思い込みと似ていないだろうか?小さい子にはこの前提は通用せず冗談が通じなかった。

他人の気持ちを理解するのは容易ではない。それなのに他国のリーダーの心理を理解しているという前提が抑止論だ。そんないい加減な理屈でいいのか。敵の指導者は常に冷静なのか。もし自分の目の前の戦況しか見えない指揮官がいて、やられそうだから先に打っちまえ!と判断する可能性が全くないとは言い切れない。それは歴史が証明している。1962年のキューバ危機で、ソ連の潜水艦長は核魚雷の発射命令を下したが、それに従わなかった部下がいたおかげで発射されずにすんだという事実が知られている。

あの日、熊Gの打ち下ろした棒はスイカのはるか彼方の床を叩いただけだったが、小池の一撃は三浦の農家が丹精込めて育てあげた三千円の大玉の頂点で炸裂し、球は砕け、真っ赤な汁が飛び散った。

熊倉洋介

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