今月の熊G 2026年2月
- piyo-kamakura
- 3月12日
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トントコトン、トントコトコトン・・・・・・リョースケが叩く出囃子の太鼓が鳴り響く中、2階の廊下に三人の力士が登場した。ピヨピヨ場所の幕開けだ。降りてきてホールに作った土俵に上がり、浴衣を脱いでマワシ姿になると、その体から発する本物の迫力に思わず集まった親子から歓声があがった。そしてシコのそろい踏みや摺り足、ぶつかりけいこなどを披露した後、小さい子から順番に取り組みが始まった。といっても赤ちゃんは抱っこされて泣くだけだが。さすがに4、5歳クラスになるとこわごわ当たって行って真剣な顔で押していた。子どもたちに続いてパパたちの番になったが、大人が本気で押してもびくともしない力士の強さをまさに肌で感じたと思う。
強い力士といえば、いま大相撲で無類の強さを見せているのが安青錦(あおにしき)だ。3年前に入幕して以来、史上最速で大関になった。安青錦の相撲の取り方は決まっている。立ち合いでドンと頭からぶつかって、そのまま頭を相手の腹につけたまま廻しをつかんで寄り切る四つ相撲スタイルだ。絶対に頭を上げない。ワンパターンといえばそうだが、おおかたの対戦相手はわかっているのにその形を崩せないで土俵をわってしまう。先場所は横綱大の里にアゴを掴まれひっくり返されて完敗だったが、その後ますます頭を下げて下からの攻めに徹している。なんでもそれはヨーロッパで多い取り方なんだって。そう、彼はヨーロッパから来た。
安青錦、本名ダニーロ・ヤブグシシン、愛称ダーニャはウクライナで7歳から相撲を始めた。国際大会で好成績をおさめるなど活躍していたが、17歳の時にロシアがウクライナに侵攻し、ゼレンスキー大統領は18歳以上の男性の出国を禁止した。相撲を続けたかったダーニャは18歳の誕生日の直前に日本にやって来て、国際大会で知り合った学生選手の家に転がり込んだ。そこからツテをたどって相撲部屋に入門し、異例のスピード出世で大関になったというわけだ。
彼はあるインタビューで「母国の人たちに勝つ姿を見せたい」と語ったという。それはどういう気持ちなんだろう。単に喜んでもらいたいのかも知れないが、それだけではない複雑な心境があるはずだ。ウクライナの友だちはみんなもう国外に出ることはできず徴兵の対象になっている。すでに多くが戦場にいるだろう。自分だけが平和な国に逃げて来て好きな相撲をやっているという負い目を感じても不思議じゃない。だから国の人たちにふまじめな姿は見せられない。そんな想いが安青錦のまっすぐな戦い方に現れていると熊Gは思ってしまう。
今回の父母会行事は役員のひとりが両国にある中村部屋という相撲部屋に縁があり、ピヨでのイベントをお願いしたところ若手の力士が三人も来てくれて実現した。そしてこのピヨピヨ場所で一番盛り上がったのがコイケの取り組みだった。国技館、いや幼児棟を揺るがすコイケ、コイケの大コールのなか土俵に上がり、仕切り位置でそんきょの姿勢を取り、右、左、真ん中と手刀(てがたな)を切った。カッコだけはいっちょまえだ。ハッケヨイでバシッと組み付くとさらに応援の大歓声。なかなかの押し相撲の体勢。力士は心得たものでしばらく受け止めていてから後ずさって土俵を割った。
そして本日結びの一番はシバタ山の登場。まるで牛にたかる虫のようにクルクル回って会場を沸かせた。そのあとクラスごとに力士と記念写真を撮って楽しい場所はお開きとなった。
ピヨが実践しているさくら・さくらんぼ保育の創始者の斉藤公子は、子どもたちを本物の文化に触れさせなさいと言っていた。本物こそが子どもの感性を豊かにするからだ。今回の力士との触れ合いは子どもたちの感性に響いただろうし同時に保育園時代の楽しい思い出になると思う。平和な国でよかった。
ところで、手刀を切るのは勝った力士が行司から懸賞金をもらう時の仕草なんだけど、立ち合いの前にやったって何にも出ないよ。

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