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今月の熊G 2025年4月

  • piyo-kamakura
  • 5月3日
  • 読了時間: 4分

聖書にこんなオハナシが書いてある。100頭の羊を飼っている羊飼いがいました。ある日、一頭いなくなった。大変だ、迷子になったらオオカミに食べられちゃう。羊飼いは99頭の羊を原っぱにほったらかして迷子の一頭を探しに行きました。そして・・・・・・。ちょっと待って。ほったらかされた99頭の羊はどっかへ行ってしまわないの?こっちにオオカミがきたらどうすんの?迷子も心配だけど残りのみんなも心配じゃない?

 

さて、話は現代の小学校に飛ぶ。こちらは新聞に書いてあった本当の話。あるクラスに授業中に一人で話をしたりウロウロ立ち歩いて友達に話しかけたりするとても落ち着きのない児童がいた。たびたび授業を中断させるので担任は困っていたし、他の子どもたちも困っていた。職員会議で教師たちがその児童について話し合ったけどいい解決案は出てこなかった。担任が冗談で、もう私イヤ、あの子に授業やってもらおうかしらと言った。すると同僚の一人が、そうだよね、確かに先生って一人で喋ってるし、教室を歩き回って生徒に話しかけてるよね、と返した。担任はそれを聞いてふと真顔になった。

次の日クラスに小さい先生があらわれた。その児童は担任の横に立って黒板を消したり、プリントを配ったり、生徒を当てたりする役をおおせつかった。ときどき先生にツッコミを入れたり、入れ返されたりしてかけあい漫才みたいになり、授業がとても楽しくなった。その児童もイキイキとして、友だちのジャマをすることもない。みんなが困っていた彼の行動が授業を活性化する行動に逆転したのだ。それ以来、その児童が落ち着かなくなってくると担任は彼を小さい先生にしてあげた。

ちょっと待って。その特別扱いされた児童はいいかもしれないけど、ほかの子たちは先生がえこひいきしていると思うんじゃないの?もちろん思う。思うけど、ほかの子たちはその落ち着かない児童が何か深刻な問題を抱えていることをわかっていて、担任が特別扱いすることで彼を危機的な状況から救ったことをみんな理解していたのだ。そして同時にほかの子たちは、もし自分が困った状況におちいったとき、この先生は自分を特別扱いして助けてくれるに違いないと感じたのだ。この出来事のあと、担任はいろんな相談を持ちかけられるようになったそうだ。

 

保育園にも特別扱いが必要な子がいる。みんながやってる遊びに入らず一人で離れていって、ごはんの時間になっても戻ってこない。ほかの子とトラブルになり大声をあげて突き飛ばす。ピヨに限った話でなく、どこの園にもそういう困る子はいる。でも「困る子は困ってる子」なのだ。

保育者はその子を特別扱いする。まずはその子に寄り添うことで何に困っているのかを理解する。そしてそれがわかれば問題を解決する方法を考える。原因を解消することができればいい。でもすぐに解決できない時はいっしょに悩む。困っている状況が好転するまで寄り添うという特別扱いだ。

さらに一歩進んだ特別扱いのしかたが、もち味を活かすやり方だ。誰にでももち味がある。もち味は個性だからみんなちがっている。みんなちがってみんないい、という。ところが集団になると、みんな同じがみんないい、になりがちなのがこの社会。みんなと同じにできないと「困る子」扱いだ。

そんなとき保育者はまず寄り添うことでその子のもち味を見極める。そしてそのもち味にふさわしいステージを探す。例えばさっきの小学校の小さい先生みたいな。そこまで大げさでなくても、新しい遊びを思いつくとか、お手伝いをしてくれたとか、ふてくされてる友だちに声をかけてあげたとか、それぞれがもち味を発揮してる場面にひかりを当ててあげる。保育者が、いやこの社会を生きている誰もが、お互いのもち味を理解して、みんな特別扱いでみんないい、になったらいいのに。

 

迷子の羊を探しにいった羊飼いは見つけた羊を肩ぐるまして帰ってきた。じっと羊飼いを待っていた99頭の羊たちはそれを見て、自分が迷子になってもきっと探しに来てくれると安心したにちがいない。

いや違うな。やっぱ逃げてもつかまるじゃん、と思ったかもね。

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